わたしの京大力

No.010
板谷 崇央

ビッグデータから医療を変える。
学部も国境も飛び越えて
究める公衆衛生の専門家への道。

医学研究科 博士後期課程 2年生 板谷 崇央

Profile

医学部在籍時から国立がん研究センターや内閣府革新的研究開発プログラムに参画。平成28年度の京都大学総長賞に選出される。現在は京都大学大学院医学研究科に所属する傍ら、2020年9月よりユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの博士課程にも入学。両大学院での博士号取得をめざす。

学部を超えて出会った恩師と研究の魅力

 現在は公衆衛生の研究者としての道を歩もうとしていますが、高校生の頃は官僚として医療システムづくりに携わりたいという夢がありました。官僚といえば法学部というイメージもありますが、私はあくまで医療の専門家として、それも今後さらに重要性が増す地域医療を支えるであろう看護師としての知識や経験が役に立つと考え、そうした医療専門職を養成している京都大学の医学部人間健康科学科に進学しました。

 入学して驚かされたのは、どの学部・研究科の授業も聴講できる学びの自由さです。私も1年生のときから他学部や研究科の授業を聴講しては、先生を訪ねてお話をお聞きしました。最初こそ「専門外の学部生が訪ねていっても門前払いされるのではないか」と構えていたのですが、どの先生方も快く招き入れてくださったのが印象に残っています。訪問の際の礼儀として、あらかじめ先生の論文やその分野の入門書を読み込んでから伺いました。おかげで、専門的な内容も理解することができ、毎回、新たな発見や気づきを得ることができました。もちろん医学部の勉強がおろそかになっては本末転倒なので、専門科目も一層頑張りました。

 そんななか2年生の冬に出会ったのが、当時経済学研究科にいらっしゃった後藤励先生です。後藤先生は医療経済学がご専門で、他学部のしかも学部生である私を熱心に導いてくださった「人生のお師匠さん」です。ゼミ生でもないのに先生の研究室に通い、1年間ほど勉強させていただいた後、先生が関わっておられた国立がん研究センターのプロジェクトに参加させていただきました。

 国立がん研究センターには、日本中のがん患者さんの診療データと医療費の情報が集められています。私が参画したプロジェクトはその膨大なデータを分析して、年齢、性別といった条件別にどの種類のがんに罹患したらどれくらいの医療費がかかるのかを計算するというものです。私にとっては初めて携わる大規模な研究でした。研究の対象となるのは巨大な患者集団の蓄積データですが、一つ一つの診療データに目を通してみると、その患者さんが目の前にいるように感じられることがあります。そんなときに、患者さんにどのような研究成果をお返しできるだろうかと、医療人としての使命感が湧いてくるんです。このプロジェクトでは、現在携わっている公衆衛生につながる研究の魅力を初めて実感することができました。

京都とイギリス、2つの大学院で研究者として成長する

 研究職に惹かれる一方、病院実習で看護師の仕事の楽しさにも触れ、進路には悩みました。最後は後藤先生や医学部の先生の「勉強は若いうちにしておきなさい」という言葉に背中を押されて、京都大学の公衆衛生大学院(大学院医学研究科 社会健康医学系専攻/SPH)へ進学することに。ここへの進学を決めたのは、医学だけでなく社会学、医療経済学まで公衆衛生の専門家として身につけるべき内容を幅広く学べるカリキュラムだったからです。修士課程では基礎をしっかり身に付け、博士課程では透析の診療データを使った研究を行っています。

 京都大学に籍を置きつつ、日本に比べて厳しいと言われる海外の大学院で実力を磨きたいという思いで、この秋からはユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の博士課程に入学しました。イギリスは特に町の医師や看護師よるプライマリ・ケアの取り組みが進んでいます。学生としてその環境に飛び込んで、データベースの作り方から研究方法までを一から習得することが目標です。今はコロナの影響で、日本からオンラインで研究の準備を進めている状況ですが、私一人に指導教官とオブザーバー的な役割の教員を合わせて7名の先生がついてくださり、研究者を育てる体制の手厚さに驚いています。

 思い返せば人との出会いに導かれ、いつも素晴らしい環境で学ばせていただいてきました。公衆衛生は普段は脚光をあびることの少ない分野ですが、人々の暮らしの礎を支える非常に重要な学問です。社会の健康・福祉の向上に寄与できるよう、日々コツコツと研究を続けていきたいです。

No.010イメージ

公衆衛生大学院の修士課程在学中、日本臨床疫学会で発表を行いベストポスター賞を受賞した。

No.010イメージ

UCLの指導教官たちとのオンラインミーティング。それぞれ専門領域の異なる4名の教官からの指導を受けながら研究プロジェクトを進める。

わたしの京大力MY KYODAI-RYOKU

広く、深く、真摯に学び続けることで出会いを引き寄せ、己の道を切り拓く力

京都大学基金へのご寄付のお願い京都大学基金へのご寄付のお願い

人材育成を中心とする記念事業への取り組みや、
未来に向けて“京大力”を磨き続けるための運用原資として、
京都大学基金への寄付を募集しています。

↑↑